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儚乃の言葉を遮るように、誰かが僕の肩を叩いた。
「クククク。なあ、だから心配するなって言っただろう」
葬儀場で会った、あの長髪でサングラスの男が、ご丁寧に割とデカい傘を差して立って、ニヤついていた。
「いや、心配すんなっていうか、何なんですか、これは? あなた、何か知ってるんですか?」
「ああ? 知ってるも何も、オレはこいつの『願い』を叶えてやっただけよ。んで、あの女の子はゾンビィになって蘇っただけの話だ」
男は、ヒヒヒと言いながら、右親指を立てて、「いいね!」のポーズを取りつつ、ドヤ顔をした。
「は? ちょっと、冗談やめてくださいよ。彼女の『願い』が、ゾンビィとして蘇るとか、あり得ないでしょ!」
「あり得ないってお前、なんでそんなこと言えんだよ。オレは、まあその、『死神』なんだからよ。そんなことぐらい余裕でできんだよ」
男がキレ気味に言ってきた。
僕は、ますます訳が分からなくなってきた。
「はいはい、とりま、儚乃を連れて帰るんで。どこの誰か知らないっすけど、邪魔しないで……」
と言い掛けたとき。
ピーポーピーポー
けたたましいサイレンの音と、点滅する赤い光が近づいてきた。
「冗談じゃねえって。面 倒なのが来た。お前ら、とにかく逃げろ」
自称「死神」が吐き捨てるように言ってきた。
「は? 逃げろって、どういうことだよ」
「お前な、そいつの汚い顔面、見ただろ? 化け物なんだよ。ゾンビィなんだぜ? 警察とかに捕まったらな、人体実験されちまうんだって。そうなったら、せっかく叶えてやったコイツの『願い』が、台無しになっちまうだろうがよ!」
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