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「……消えた。アイツ、マジで死神なんかよ……」
「ねえ、慈恩君。どういうことなの? 私、なんでこんなことになってるの? 記憶が、全然ないのよ」
「お前は、一度、死んだみたいなんだよ。どういう訳だか知らないけど、鼻に栓されて、お経読まれて。火葬場に行って、燃やされる直前だったんだ」
儚乃は、全身が硬直したように立ち止まった。
「私が、死んだ? この肌の色とかも、死んだからなの……」
うつむいて、目を細めた。雨が、一層激しく僕たち二人の体を打ち付けた。
「まぁ、多分そうだ。よく分からねえけど、死神が言った通り、早く逃げようぜ」
僕は、嫌がる儚乃を引きずるようにして、人目を避けつつ、自分の家目指して走り出した。
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