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第1章 彼女が、ゾンビィになった日
その日、彼女が死んだ。
奇しくも、彼女の16歳の誕生日だった。
ぼくが高1になって半年後の、突然の出来事だった。
プー、プー、ガチャ
聞き慣れた電子音の次にもたらされた彼女のお母さんからの言葉で、僕の目の前は真っ暗になった。
「儚乃(かの)が昨日、急に亡くなりました」
それ以上、お母さんからの涙声は聞き取れなかった。
「え、あ、お・・・、ええええっ!!」
気が動転する、という単語は、この時のためにあるんだなと、思った。
お葬式は、いつからですか、と聞きたかっただけだが、その声すら、出なかった。
そこから先は、どうしても思い出せない。たぶん、お葬式の会場を聞いたんだと思う。
儚乃ちゃんは、彼女は、たまたま近所に住んでいた美人で聡明な人だった。小学生のころから、同級生の憧れの存在だった。
だけど、彼女はそんなことを鼻にかけない男勝りの活発な性格で、ちょっと控えめな僕とは妙にウマが合って、仲良しだった。
それが、中学に入ってから何となく意識し始めて、そのうち、「女子として」気になる存在になった。
そんな彼女と、突然の別れが来るとは思わなかった。しかも、「変死」という非業の最期。しかも、彼女の誕生日に。
悲しいとか、辛いとか言う前に、嘘だよな?という気持ちが、現実を受け入れさせなかった。
気が付けば、ぼくは学生服を着て、ナンタラ会館という告別式の会場に来ていた。
「みなさん、ありがとうございます。最後に、儚乃の顔を見てやってください……」
お母さんが、涙声でそう言ったけど、龍頭(りゅうとう)高校1年5組のクラスメートは、棺に近寄るだけで、誰一人として儚乃のデスマスクを見ようともしなかった。
それどころか、不謹慎にも、クソみたいなヒソヒソ話が耳に入って来た。
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