アイスクリームがとけるまで

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そんなテーブルの上にアイスクリームが二つ並んでいる。 一さじ口に入れて目を閉じる。 ここの峠の茶屋に来るまでの出来事を思い出す、この世の不機嫌を一身に集めた朝4時起き、接続の悪い電車とバス、途中、うるさく話しかけてくるおばさん達のハイキンググループ。 アイスクリームがとけ始めるころ、そうした雑念は消え去り、小さい頃の思い出が映画を観ているように鮮やかに浮かび上がってきた。 お父さんは買ったばかりのテントを嬉しそうに設営していた。 お母さんは、この日のために考えぬいたキャンプご飯の調理方法を反芻している。 その横で私もおぼつかない手つきで野菜を刻んでいた。 夜、ランタンの灯りでみんなの顔はほんのり黄色がかっていた。ご飯を食べながら、料理長であるお母さんの自慢話をみんなで聞いていた、私もこの料理に対する貢献度のアピールを忘れなかった。 お父さんは黙ってニコニコとお母さんと私の話を聞いていた。 夜、深い森の闇が怖かった、暗闇から聞こえてくるふくろうの鳴き声や動物の気配が恐ろしかった、でも、お父さんとお母さんが狭いテントの中で一緒に寝ていてくれたので、その怖さは和らいだ、テントの外の闇が恐ろしい分だけ、お父さんとお母さんがすぐそばに居てくれることが嬉しかった。     
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