アイスクリームがとけるまで

7/8
前へ
/8ページ
次へ
そいつはまた大声で笑い始めた。 その、無神経な大笑いなんとかならないの? アイスクリーム一つでそんなに嬉しがるなんてアホじゃない、 その角刈りの頭、もう少し、今どきの男の子ふうにできないの? 身体にピッタリの自転車選手のユニフォーム、プロレスラーみたいなあなたの体形にちっとも似合ってないんだけど、 そんな私の困惑をよそに、その暑苦しいヤツは「ガハハハッ美味しかった、助かった、どうもありがとう、ガハハハッ」となおも大声で笑いつづけていた。 夏の狂暴な日差しの中、こんな高い所まで自転車で登ってくる、バカ体力と無駄な日焼けは尊敬するけど、世界平和にはまったく役だたないんですけど。 笑うと目じりにシワがよってオジサンみたい、 人の迷惑顧みず、美味しかったら、全力で「美味しい」って言って、 嬉しかったら渾身の力を振り絞って「ありがとう」って言って、 クジラをも飲み込みかねない大口あけて笑い続ける、 その単純バカさの度合いは、特別天然記念物なんですけど、 でも、そこまでハイパーウルトラ単純バカだったら、嘘をついたり、人を裏切ったりすることなんてできないでしょうね、 そんなに他人の痛みを気にしてたら、とっても苦しいよ、     
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加