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オリヴィア様は、いつからお留守になったのだったかしら。神様、あなたもしばらく工房にいらっしゃらなかったわね。その頃のお部屋はランプも暖炉も消えたままで、朝も夜もありはしなかった。それに退屈が時間の感覚を狂わせて、あのときどれくらい時間が流れたものか分からないの。とにかく、ひどく長かったように思えるわ。
だけど誰もいなくても、私に食事は必要ないし、勝手に動いて怪我をすることもない。「人間とは違うけれど、あなたの良いところよ」と褒めていただいたことがあるから、私は初めての静かすぎる時間を、しゃんと背筋を伸ばして過ごしたのよ。
ある夜、工房のランプを一つだけ灯して、私の頬を撫でたのは神様の指だった。オリヴィア様とは違って、陶土をすすいでもなお白く乾いていた指先が、その日は何だかしっとり湿っているみたいだった。それにとっても冷たかったわ。
ランプの光が神様を照らしきれなかったのは、神様がめったにお召しにならない、黒い服のせいだったかもしれない。どうしてそんな服でこのお部屋にいらっしゃるのと、お返事はないと分かっていても尋ねてしまったわ。またオリヴィア様が「黒い服で作業されると、お洗濯が大変なのよね」と、美しい眉を顰められるだろうと思って。
でもそんな会話はついに聞かれなかったから、もう叱られることはないって、神様、あなたはご存知だったのね。
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