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箱の中では、神様が何をなさっているのか分からなかったけれど、ずっとゆらゆら揺れていて気持ちが悪かった。隙間から入ってくる風は少し湿り気を帯びていて、いつからか鳥の声が盛んに聞こえていた。工房を出てきたのだと察したわ。嗅いだことのある匂いが交じっていた。開いた窓の傍でオリヴィア様に抱かれて、庭で土いじりをする神様を眺めたときと同じ。
説明もなく押し込められた暗闇の中、しばらく私は機嫌を損ねたままだったわ。でも神様がなさることに理不尽なことはないって、本当は信じていたから、ときどき大きく揺られては一人前に、神様の足どりを心配なんかしていたの。
突然揺れが止まって、とげとげしい声が聞こえるまでは。
「おまえの神は誰だ」
知らない誰かが、そう尋ねたわ。もちろん私は箱の中だから、神様に対して。おかしいわよね、神様に神様は誰かと訊くなんて。でも、神様のお返事も変だったわ。
「……神はいないと、最近知ったところだよ」
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