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幼き頃、初めて「それ」を口に
ねっとりとした甘酸っぱさ
ゆっくりと、とろける「それ」
祖母が作った「まほうのくすり」
お腹がいたい
そう訴えると
ちょと舐めるのよ
そう差し出して
祖母特製の梅ペーストを
思い出すは
あの祖母の家のかほり、配置、お風呂場
見た祖母の笑い顔、シワの数、寂しげな
「またね」
もう祖母は作らない「それ」
もう祖母は作れない「それ」
「それ」こそが祖母の味
祖母の身体がとろけた日
ただただ、「それ」がほしくて
泣いた
そう、きっと、そう
口の中 とける 梅ペーストは
もうとろけない
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