第四話

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「はい、ほとんど終わりました」 「ねえどういうこと、こっちの部屋に押し込んじゃったよ」 「うん、ごめん」 「あのー?ハンコいただいても」 ああ、はい、ありがとう、とハンコを押すと業者は帰っていった。 結構あるなという人に、引っ越しじゃねえかよというと、そうだそれのどこが悪いと言ってきやがった。 「ベッド、こっちに置いたけど、もう、そっちの部屋使ってもらおうと思ってたのに」 「ごめん、はー、やっとあこがれのベッドだ―」 梱包したままの奴を撫でている人。 「そうなの?」 「うち、布団派だもん」 「ふーん」 「さあて、このキッチンテーブルさ、俺、借りてもいい?」 ジャケットを脱ぎ腕まくり?じゃなくて脱ぎ始めた。 「え?これ?いいけど」 「仕事用によさそうだなと思ってさ、エーと、これ、ねえ、その上片付けて」 「うん、どうするの?」 「いいのがあるんだ」 と言いながらも部長は持ってきた紙袋から、長そでの黄色いТシャツを出した、何?キキララ?かわいいのを着ると「ねえ、この間のジャージ出して」 ジャージ?アーはいはい、出してくると着替えた。 「お気に入り?」 「うん、気に入った」 嬉しそう、ソックスはポンポンのついたハイソックス、それも黄色、指の先がピンクだし。そして、ハートの髪留めをパチン。眼鏡と合わねー、と笑ってやった。 うっせー、そこまで気が回らなかったなと言いながらもその辺のものに手をかけた。 するとガタガタと何やら大きなものを出してきた。 「ちょいまち、滑ってこける」 スリッパ、を出した。 大きな目なのに、もっと大きくした目。 「いいのー?」 「いいわよ、おそろいで悪いけど」  普通のスリッパに猫の刺繍だけど、ウィンクしててかわいくて色違いで購入、あいつが履くわけないから前のを捨てて出しただけ。 「いい、いい、猫可愛い、ルン」 ルンだって、るんていう、やめとこ突っ込むの。 「やっと日の目を見た」 「なにこれ、かわいいー」 「だろ?椅子もあるんだ」  ピンクの足に白の天板、ダイニングテーブル、端にアクセントでハートがちりばめられている。 私と元彼が買ったものはどんどん奥へと追いやられ、部長好みというか、私も好きなかわいいものが並び始めた。
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