僕と百合子さん

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これは、僕が学校に行かなくなってしばらくしてからのことだ。 僕は、伯母の百合子さんの家に預けられる事になった。 百合子さんは、母の姉である。 僕は比較的、両親が年を取ってから出来た子供なのだけれど、百合子さんはとても母の姉には見えない。せいぜい二十歳か、それよりも若く見える。 つやつやの長い黒髪は三つ編みにしていて、いつもジーンズ、黒のタートルネックを着ている。かけている黒ぶちの眼鏡は、昔の有名な漫画家みたいに大きくてちょっとバランスが悪い。 もしかしたら、僕の姉と言っても、中学のクラスメイトには気付かれないかもしれない。 「ははーん、俊輔、お世辞を言ってもなにもでないよ?」 百合子さんはそう言うと、僕の頭を軽くチョップする。 「どうしてそんなに、見た目が若いの?」 僕は、百合子さんの庭の畑で取れた、グリーンピースを剥きながら聞いた。 「そう言う言い方は失礼だよ君、実際に若いんだ、私は」 「でも、僕のお母さんのお姉さんじゃんか。お母さんは三十五才で僕を産んだんだよ、だったら百合子さんは五十才は越えていないとおかしいよ」 百合子さんは、野菜を洗う手を止めると、うーんと唸って、 「いるんだよなぁ、かかりにくい奴が」 と言った。 「かかりにくいって、何が?」 「こっちの話だよ俊輔。かかりにくいんならしょうがない、百合子さんのとっておきの秘密を教えて上げよう」 百合子さんは手を拭いて、僕の耳元にそっとささやいた。 「十五日の夜、二十三時にこの台所に来てごらん」
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