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ここは嫌いだ。
そう思いながらホルンは穴の縁に立っていた。ごうごうと水の流れる音が思考を散らしていくようだった。
スイの姿はなかった。小屋に戻ったのだろうか。氷の平原が続くとはいえ、ホルンやすいより背の高い氷はいくつも転がっていた。行き違いになってもおかしくない。それでもスイはここへ来るだろうと、ホルンは待っていた。
「終わったぞ」
スイとは違う重い体重を感じさせる足音に、ホルンは振り向いた。巡回者の男が立っていた。
「ここはうるさいな」
「スイを待っている」
「ああ。去年来た時、ここは二人だったな」
「スイは、小屋に」
「小屋には誰もいなかったが」
「スイ!」
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