僕の隣はどうやら空席らしい

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僕の隣はどうやら空席らしい

 僕の隣は空席らしい。  僕の席は一番後ろの列の廊下から二列目。その隣には誰も座っていないのに机と椅子が置いてあるらしい。 「らしい」といったのは、僕には空席に見えないからだ。僕の隣にはちゃんと机と椅子があって、そこには女子生徒が座っているのだ。僕にはそう見える、と言った方が正しいのかもしれない。なぜなら、他のクラスメイトには見えていないのだから。  僕は一週間前の九月の初め、二学期が始まると同時にこの高校に転入してきた。転入生の登竜門というべきか、多くの生徒に囲まれて質問攻めにあった。ここのクラスの人たちはフレンドリーな人が多く、ほぼみんなが僕に話しかけてきた。一人を除いて。そう、隣の席の女子生徒を除いて。彼女はいつも一人自分の席に座っていた。明るく仲がよさそうなクラスだと思っていた僕は不思議だった。  休み時間になると必ず誰かが話しかけてくる。もう、クラス全員と話しただろうか。そんな頃だった。僕は何気なく聞いた。本当に何気なく。意識したというより会話の中に自然に出てくるそんな感じで。この一週間不思議に思っていたことが自分の中でおさえきれなくなって、知りたいという欲望に駆られて。     
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