美メンズ・イメージクラブ

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「ちょっと待てよ!」  背中に男のセリフが突き刺さる。テレビでよく耳にするあまいセリフだ。 「俺から離れるな!」  美形のイケメン。魅力的な声。男っぽく強引な態度。岬の脳内は、ここがボッタクリ店だということもすっかり忘れ、とけてしまうほど熱を持っていた。  岬は男の誘惑に負け、振り向こうとした。すると、それを制止するかのように部屋の隅のドアが強引に開き、警察服姿の男性たちがなだれ込んできた。 「人質を解放しろ!」  部屋に入ってきた人数の多さに怖気づいたのか、男の手が岬の手首から離れた。  反動で体制を崩した岬は、それでも背後の男を振り返った。目と目が合う。その瞳は、どこか寂しそうだった。  床に倒れそうになった岬の身体を、警察服姿のひとりが支えた。 「大丈夫? ケガはない?」  ミクに報告しなきゃ。とんでもないシチュエーションだったよ。ウワサ通りのすごい店。とにかく、手の込んだ演出がすご過ぎるよ。  岬の身体を支えた男性は、介抱するようにそのまま部屋から出ると、岬を店の外へと連れ出そうとした。 「えっ? もう終わり?」  やっぱりこういうお店ってサービスの時間、短いんだな。もうちょっとあまい時間に触れていたかったなぁ。  店頭の自動ドアが開く。介抱されたまま店の外へと出た。店の前には多くの人だかり。  その光景に違和感を覚えつつも、岬は警察服姿の男に尋ねた。 「あっ、スタッフさんですよね? まだ、料金のお支払いが済んでないんですけど……」
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