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「じゃあ、そこの椅子に座って待っててね」
落ち着いたBGMが流れる店内。男に手を引かれるまま細長い廊下を歩き、ある部屋に通された。
真っ白な室内空間の中に、ポツンと一脚の椅子。男の指示に従い、椅子に座ると、それを見届けるようにして男は部屋を後にした。
「やばい、帰りたいかも……」
岬は不安を打ち消すように声に出し呟いた。
──やっぱり来るんじゃなかったなぁ。ミクみたいには手放しで楽しめないよ。
キョロキョロと白い壁を眺めながら五分くらいが過ぎたころ、廊下で男の叫び声が響いた。誰かと言い争うような声。岬は心臓を鷲掴みにされた気分になり、不安が加速した。
やっぱり帰ろうと、椅子から立ち上がった時だった。ドアが激しく開き、ひとりの男が部屋へと入ってきた。
さっきの男よりもはるかに美形な男性。完璧に岬のタイプだった。
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