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「あっ」
「うるせぇ。声、出すなって言ったろ?」
岬を抱きしめる男の手に力が入った。
自分のうっかりした性格を岬は恨んだ。店に来る前に銀行に寄って、お金を下ろさなきゃと思っていたのに、すっかり忘れてしまっていた。財布に入っているのは三千円くらい。──絶対に、お金、足りないよ。
「あの……」
「なんだよ?」
「ちなみに、おいくらですか……?」
岬は自分の顔が赤らんでいるのが分かった。こんなシチュエーションまで用意して熱演してくれているのに、料金の話をするなんて。
「二百万だよ」
「はぁっ?」
岬は一気に目が覚めた。と同時にミクを恨んだ。やっぱり危険なところじゃないか。だから来たくなかったんだよ。完全にボッタクリだよ。慣れない態度を取っていたから、きっと足元を見られたんだ。最悪だ!
このままここにいたら、何をされるか分からない。はやく逃げなきゃ。
岬は身の危険を感じ、羽交い締めされた身体を捻ると、男から身を引き離した。
ドアを目がけて走ろうとした岬の手首が男に掴まれた。
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