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きっと俺は、君が望むようなカタチの愛を、君に与えてあげる事が出来ない。
きっと俺は、君のそばに居てあげたいけれど、それも叶える事が出来ないんだ。
誰かに本気で惹かれるとか、誰にも渡したくないとか、振り返ってみたら無かった気がする。
もっと早くに君のことを知っていれば。
きっとこんなに迷う事は無かったんだと思う。
どんな形で出会ったとしても。
俺は君に惹かれたんだと思う。
だけどそれは。
君の幸せにはならない気がした───
「おい、行かないのかぁ」
前方から茅野の声が聞こえて、右手を軽く挙げて応える。「今行く」
左手の缶コーヒーをゴミ箱に投げ入れ、茅野の背中を追って改札口へと走った。
口に出してしまえば、きっともう戻れなくなる。
俺のニジュウイチグラムは、もうとっくに、君で溶けてしまったから。
もし俺と君がどこかで繋がってるなら、それだけで十分なんだ。
だから。
君のことなんて別に興味ない。
所詮、ただの気の迷い。
君を悩ませるくらいなら、君にやがて来る幸せを奪うくらいなら、きっと蓋をする事なんて容易い。
俺の気持ちなんて、君が知る必要はないんだ。
嘘ばかりを詰め込んだポケットから、押し込んだスマホを取り出した。
打ちかけていた21文字を消去する。
『 君の事が好きなんだ
君じゃなきゃ駄目なんだ 会 』
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