21人が本棚に入れています
本棚に追加
「何がダサいんだよ」
「発言全部がダサいわ。何だよ『好き』って。どうでもいいだろ、そこはさ。学生じゃあるまいし、好きとか嫌いとか、基準はそこじゃないだろ」
「じゃあ何だよ、基準ってさ」
こんな話を夢中に話すお前の方が、よっぽどダサい。いままでの俺なら、きっとそう言って左側のイヤフォンも付けていた。なのに……何で付けないんだ。
「欲しいか、欲しくないか」
「何だよ……それ」
「とぼけんなよ、お前も一回くらいあるだろ。欲しくて欲しくて仕方ないってやつ。気づいたらそいつの事ばっか知りたくて、知れば知るほど後戻り出来なくて、段々とさ、満足出来なくなる……ドツボにハマるってやつ?」
知りたくて仕方ないに決まってる。
「あるかよ、そんなの」
「えー! マジで言ってんの? お前、どっかおかしいんじゃねーの?」
「そりゃ茅野だろ」
欲しくて仕方ないに決まってる。
だから後戻り出来なくなる前に。
ドツボにハマる前に。
まだ気の迷いだと思えるうちに。
どうでもいいやって、上書きするんだ。
最初のコメントを投稿しよう!