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直ちに有害鳥獣に認定され、陸上自衛隊が駆除に向かったが、戦車砲弾も榴弾砲もミサイルも、粘液質のその肉体には全く効き目がない、という。火炎放射器には若干嫌がる反応があるが、発火するわけでもなく、焼き尽くすにも大きすぎて通常の火炎放射器では全く歯が立たない。かといってナパーム弾ではすぐに体内に取り込まれて消火されてしまう、という。
さらに。
その超巨大ナメクジ ーー非公式のコードネームとして「ナメラ」の名が付いたーー は、なんと、攻撃に対して報復をしてくるのだ。それは体のあらゆる場所から粘液を攻撃対象に向けて縦横無尽に発射する。その粘液は戦車を十分覆うだけの量があり、エンジンの吸気を妨げ停止させてしまう。よって、燃料を燃焼させてエネルギー源とする兵器は、ほぼ対抗できなかった。
記録によれば、三百年ほど前にも大山村にナメクジの怪物が現れた、という。その時も村の中を這いずり回って大損害を与えたそうだが、幸運なことにその後日照りが続いたことで退治できたのだそうだ。そして乾燥しきったその頭部のみを、当時の村民たちが御神体として最初に出現した山中の祠の中に納め、「山神様」として祀っていたのだ。しかし、その祠が何物かによって破壊されてしまい、御神体が消えていた。そしてその三日後、「ナメラ」が出現したのだ、という。
あいにく今は雪解け水が山から際限なく流れてくる時期だ。さらにその後梅雨の時期が続く。夏の日照りの時期まで待ってはいられない。このまま放置すれば大山村からさらに下流の市街地にまで「ナメラ」が到達し、被害が甚大になる恐れがある。
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