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「ナメラ」を倒せ!
「なんてことを……」
そう言ったきり、老婆は絶句する。
村の外れの山中。彼女の目の前には、小さな祠があったはずだった。だが、それが今、破壊されて無残な姿を晒していた。
誰の仕業かはわからない。だが、最近この辺りの道路が舗装されてから、いわゆる「走り屋」と呼ばれる人種が出没するようになった。曲がりくねった峠道を車でスピードを出して走り回る連中だ。
祠は道路からは5メートルほど離れた場所に置かれていた。だが、その日、道路のアスファルトには、祠のあった場所に向かって真っすぐ黒いスリップ痕が二つ並んで刻まれていた。この道路にはガードレールは存在しない。おそらくカーブでアンダーステアを出した車がそのまま道路を外れて突っ込み、祠を直撃したのだろう。
「山神様が……山神様の封印が……解けてしもうた……えらいことじゃあ! 皆に知らせにゃ……」
慌てふためいた老婆は、自分の軽トラの運転席に飛び乗る。
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