第01章 死んで来世で結ばれよう

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第01章 死んで来世で結ばれよう

「死んで来世で結ばれよう……」 横浜で一番人気の花魁(おいらん)朱音(あかね)は暗闇で目を覚ました。 頭に響くは、かつて身請けを約束した間夫(まぶ)の悲痛な声だ。 末期(まつご)の声と呼んでも良い。 そう、確かにわっちは(あや)められた、いえ、心中したのでありんす。 どちらも地獄と想われる、あの場所で。 朱音は記憶を整理しながら、男の顔を想い出す。 それにしても、ここはどこでありんしょう? 閉鎖空間の中で、遊郭の掟を想い出す。 心中を図り、一人だけ生き残った場合は、殺人と見做(みな)され死罪。 二人共生き残った場合は、晒し者とした上に穢屠(えと)亜人(あじん)に身分を落とされる。 心中の遺体は親族に渡されず、葬儀さえも禁じられており、そもそも親に売られた遊女は投込寺で埋葬されるが関の山。 でも、わっちは生きている……。 死罪となるか、身分が落ちれば年季が明けても、町人としての暮らしは叶わないでありんす。 もう、誰も身請けを申し出ない。 やはり、どちらも地獄でありんすね。
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