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絶望する朱音だったが、ある違和感に気が付いた。
暗闇とはいえ、暗すぎる。音すら聞こえない。
妓楼の折檻部屋とは違うようだ。
幾ら瞬きをしても、この暗闇に目が慣れない。
足がおかしい方向に捻じ曲がっているが、痛みはない。
就寝時は、浴衣に伊達締めを着用しているはずだが、この風合いは薄い装束のみ。
両手で探ると、大きな樽のようなものに入れられていることが分かる。
死罪になるにしても、この仕打ちはあんまりではござりんせんか?
力任せに頭上の蓋をこじ開ける。
痛みの感覚がない分、力加減も底知らずになっている。
いや、この場合は天井知らずというべきか。
蓋の隙間から、茶褐色の土が降り注ぐ。
一層力を入れると、勢いよく蓋が飛び、丸い月が瞳に飛び込んできた。
視力は正常。
月夜に飛び跳ねる妖・『玉兎』や『犰』まではっきりと視える。
虫の声も投げ出された土が弾ける音も聞こえる。
捻じ曲がっていた足を、本来の向きに変えて、立ち上がる。
一見すると、平坦だが、土饅頭が目印のように点々と置かれていた。
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