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小夏の言葉に、確かにそうかもしれないと僕は納得する。小夏と出会って、旅をする中で、僕はつまらないことで悩んだり、考えたりすることは少なくなった。目の前にあることを、精一杯楽しむ、それが素敵だと思えるようになった。それが、僕の表情にも出ているのかもしれない。今の僕は、他人からの評価や、出世や、見栄や、そういったつまらない縛りから解放された自由な存在だ。以前に比べて、心もずっと軽くなったような気がする。
「ねえ、せっかく同じ部屋で寝ることになったんだから、セックスでもしてみる?」
小夏がニヤニヤとした顔で言う。本気なのかどうなのかはわからない。
「まあ、そういう冗談は置いておいて……」
僕は小夏の言葉をサラリと交わす。すると、小夏は笑いながら、
「やっぱり章介変わったよ。多分、最初の日にこんなこと言ってたら、怒るか、戸惑って何も言えなくなるかのどっちかだったでしょ? まあ、少なくとも、今みたいにサラリと流したりはできなかったはずよ」
と嬉しそうに言う。
「確かにそうかもしれない。まあ、それもこれも、君のおかげだと想う」
「感謝しなさいよ」
「はい、感謝します」
僕たちは二人で顔を見合わせて笑った。
「ところで、もし良かったら、写真を撮らせてもらえないかな?」
「写真?」
「僕の趣味なんだ。最近は、あまり撮ってなかったけど」
「いいよ、写真くらい。でも、ちゃんととびきりの美人に撮ってよ?」
「まあ、精一杯努力するよ」
僕たちはもう一度、顔を見合わせて笑った。
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