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と一方的に宣言した。一瞬、雪菜の言葉が上手く理解できず、言葉を発することもできなかった。だけど、すぐに心臓がバクバクと音を立てて激しく鼓動し始める。僕は慌てて別れの理由を問うが、雪菜は明確な答えを示してはくれない。もちろん、必死に引き止めた。だけど、彼女は最後に、
「あなたと居ても、幸せを感じることができないようになったの」
と言い残して電話を切った。
それから、僕がどんなに電話をかけても雪菜が応答してくれることはなかったし、もちろん、彼女から電話がかかってくることもなかった。
雪菜との別れで悶々と悩む僕に畳み掛けるように降り掛かってきたのは、地方の支店への転勤だった。正しく青天の霹靂とも言えるような、予想だにしない人事異動だった。もちろん、地方に支店がある以上、誰にだってそこへの転勤の可能性はある。たとえ、出世レースのトップ集団にいようともだ。だけど、それなりの管理職で赴任するのでなければ、それはただの左遷だ。つまり、出世コースから外れてしまったことを意味する。僕の場合、ただの左遷だった。
どうしてそんなことになったのか、僕には原因が全くわからない。周りの人間に比べればかなりの業績を上げていたし、同じ出世レースのトップ集団の中でも、決して見劣りするような業績ではなかったはずだ。もちろん、何らかのミスを犯したわけでもない。上司との関係も、決して悪くなかったのに。
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