Photograph

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 辞令を受け取った僕は、ただ頭の中が真っ白になり、その場に立ち尽くすことしかできなかった。だけど、僕にはぼんやりし続けている時間などない。急いで引っ越しの準備を整え、新しい勤務先に赴任しなければならない。引っ越しの準備をしていると、僕が撮った雪菜の写真が何枚も出てきた。もはや、とっておいても仕方のないものだ。いっそ、これを機会に全て捨ててしまえばいい。僕は一瞬そう思ったが、結局、捨ててしまうことはできなかった。その写真を捨ててしまえば、本当に雪菜との繋がりが完全に絶たれてしまうような、そんな気がした。  趣味の写真に関しては、酷いスランプに陥っている。以前と変わらず雑誌に投稿し続けているが、掲載される回数はどんどん減り、最近ではほとんど取り上げられることもない。コンテストに応募したところで、一次選考の通過すらままならない状況が続いている。  僕にしてみれば、写真の腕が落ちたという感覚は少しもない。むしろ、以前に比べて、技術は向上したと感じている。それにもかかわらず、思いもよらない結果が続くことに、僕はストレスさえ感じている。写真を撮りに出かけることも、必然的に少なくなってゆく。  そんな様々なことに悶々とした日々が、もう三年も続いている。僕としては、どこかでこんな生活に区切りをつけて、心機一転再出発しなければならないと思っているのだが、なかなかその一歩が踏み出せない。そんな折、就職十周年の節目として、十日間の休暇を与えられた。土日を合わせると、二週間以上の休暇になる。思えば、就職してからこれまで、二週間などという長い休暇を取ったことはない。突然そんな長い休みを与えられても、どうしたらいいのか、すぐにはわからなかった。     
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