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僕はその声に反応し、女の方を見る。女は僕と同じくらいの年齢か、あるいはそれより少し若いくらいで、明るめの長い茶髪をポニーテイルにしている。決して不細工というわけではないが、取り立てて美人というわけではない。両目の下の頬の部分にそばかすが目立っている。
それより何より、女はひどく刺激的な格好をしていた。ピッタリと体に張り付くタイプのシャツを着ていて、体のラインがはっきり出ているのだが、ブラジャーをしていないのか、大きな胸の先端に乳首の形がくっきりと浮き出ている。僕は慌てて視線を逸らした。
「ねえ、お兄さん。旅行? それとも仕事?」
女が僕に問いかける。
「旅行です」
僕はできるだけ女の方を見ないようにして答える。すると、女はこれまで一人で退屈していたのか、どんどん話しかけてきた。
「観光旅行? どこに行く予定なの?」
「特に決めていないんです」
「特に決めてないって、どういうこと?」
「どこかいい場所があったら行ってみようかなというくらいの感覚で、予定は何もないんです」
「あ、じゃあ私と同じだ」
女はそう言うと、ハハハと声を上げて笑い、空になったジョッキを店主に差し出し、おかわりを注文する。新たなビールが出されると、それを豪快に半分ほど飲む。そして、再び矛先を僕に向けた。
「私さ、旅するのが好きで、いつも行き先も決めずにあちこち行っちゃうのよね。お兄さんもそういう人?」
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