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女の言葉に、僕は少しだけ納得する。女は更に言葉を続ける。
「私にしてみれば、こんなシャツ一枚でも着なくていいくらいなのよ。何だったら、すぐにでも脱いじゃいたいくらい。ま、そんなことしたら警察に捕まっちゃうからしないけどね」
「そうですね。僕としても、そうしていただけると助かります」
「だったらお兄さん、ちゃんと私の方を見て話そうよ」
女はそう言うと、ニコリと笑った。その言葉に、改めて女の方を見る。女の言葉のせいか、胸のことはもうほとんど気にならない。
「私は安藤小夏。あなたは?」
「木原章介です」
僕は丁寧に名乗った。
たまたま同じホテルに泊まっていることがわかった僕たちは、店を出たあと、コンビニでビールやらハイボールやらツマミやらを買い込んで、僕の部屋で飲み直すことにした。小夏はハイボールの缶を開けると、勢いよく喉に流し込む。僕はその向かいで、ビールの缶をゆっくり傾ける。
「ところで、小夏さんはどんな仕事をしてるんですか?」
僕は尋ねてみる。だけど小夏からは、答えの代わりに、
「章介、固いよ。わざわざ“さん”なんて付けなくていいし、敬語やら丁寧語やらもいらないから」
と返ってきた。僕は改めて、
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