お礼だ By 龍樹

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☆ 「あ、おはようございま……って、なんか今日は朝から不機嫌ですね、栞先輩……」 「ああ、おはよう萌ちゃん……」 今日は火曜日。朝出社してきた後輩が私を見るなり、恐る恐る声をかけてきた。 私のとなりに座るこの後輩は、笹原萌(ささはらもえ)ちゃん。今年うちの課に配属された新入社員だ。 私は上司からこの後輩の教育係に任命され、以来毎日のように仕事を教えている。 萌ちゃんは仕事が覚えるのが早くて、わからなければ自分なりに考えたり質問したりして、ひとつずつ問題を解決していく頑張り屋さんだった。 おまけに、音楽の趣味とかが合っていたりで仲良くなっていって、今ではただの後輩と言うより歳の離れた友だちって感じ。 「昨日も昨日で不機嫌でしたけど、今日はさらに不機嫌ですね……このままじゃ1週間もしないうちに先輩が魔王に目覚めてしまいそうで……私怖いです」 ……ただ、あまり『遠慮』と言うものを知らないようだけど。 「大丈夫、大丈夫。ちょっとプライベートのほうでゴタゴタがあって……」 「あ、昨日教えてくれた例の大学生くんですか?今度はなにがあったんです?」 「……」 萌ちゃんには不破くんのことは少しだけ話してあるので、すぐに察しがついたみたいだ。 ……そう、私の不機嫌な原因はすべてあの生意気な大学生にある。
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