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「アレックス!それはちょっと言い過ぎよ!見かけだけならミカだって、まだまだいけるわよ。んーでもちょっと服のセンスは悪いけど」
…ビンセント。ちょっと黙ってて。
「ジーンズにシャツの何処が悪いのよ!あなた達に会うのに、どうして着飾らなきゃいけないの?」
レディ・ボーイのビンセントに言い返す。“彼女”はヒールを履くと優に2mは超える。ちょっと名の知れた店でショーガールをしていた。
「これだから…そんなんだからオトコに逃げられ…」
ビンセントがそう言いかけると、流石に友人達が彼女を連れ出した。
「うん。その通りだな。」
アレックスは、わざと上から下までミカを眺めて笑った。
「どいつもこいつもホント失礼ね。」
でも逆に、歯に衣着せぬ物言いが出来るのもこの仲間の良いところ。
…それはわかってるんだけど。
「今回は本当に落ち込んでるのよ」
ミカは、グループから少し離れたカウンターにアレックスと座り、アップルマティーニを頼んだ。
「あれだけ同棲しよう!結婚しようとか言っててこれだもん。だったら最初からそんな事言わないでよ!って話」
…そうよ。おっぱいに張りが無いミカだって嬉しくなっちゃうのよ。
カウンターに両肘突いて溜息をついた。
「まあな。期待を持たせる様な事言うのがルカだからな。お前もそれを分かってて付き合ってたんだろ?」
アップルマティーニが、運ばれてきた。
添えられた真っ赤なチェリーが、白雪姫が貰った毒リンゴの様に鮮やかだ。
「まぁ…ね。」
アレックスは友人達から盗んで来たナッツが入ったグラスの皿をミカの横に置いて、食べ始めた。
「あいつ…俺と違って女に優しいからなぁ。優しくされて勘違いしちゃう女も多いんじゃね?お前みたいに…」
アレックスが再びニヤニヤし出した。
…ふざけるな。
ナッツの皿からピーナッツを摘んでアレックスになげた。それはアレックスの綺麗なスーツのポケット中に転がり混んだ。
「もうちょっとさ…慰めてくれるとか無いの?」
届いたミカのマティーニは、綺麗な緑色で真っ赤なチェリーが添えられている。薄暗いカウンターでそれは良く映えた。
「他人の不幸は蜜の味」
アレックスは、意地悪そうな笑みを浮かべた。
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