6人が本棚に入れています
本棚に追加
マスターが挽いた豆に湯を入れながら話を続ける。
「私はその時のことを常に思い出すようにしているんです」
「どうしてですか?」
「優しくて元気で希望に満ちた少年に命を救われましたから。絶対に忘れたくないんです」
「そんな少年に出会いたいものです。 今の僕は、仕事に追われ希望がないですから」
男は、はははっと苦笑いをしカウンターの席に戻る。
「会えますよ」
そういってマスターは、淹れたての珈琲を出す。
「こちら、元気いっぱいモリモリ珈琲です」
男は、ハッとしてマスターを見上げる。
「この珈琲は、私もあなたもみんなが元気になる珈琲です」
「マスターもしかして」
「えぇ。あの時はありがとう。そして、いらっしゃい。待ってたよ」
珈琲屋を後にした男の目は、あの頃の少年の目をしていた。
見上げた空には満天の星が輝いていた。
最初のコメントを投稿しよう!