エピソード0 バサラブ氏、居座る

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そんな本人なので、難儀している仲間をただ見ていてもつまらないし、仕方がない少しばかり手を貸してやろう、いやいや礼には及ばんよくらいの気持ちで助けに入ったところ、早めに手を出せば余計なことをと怒られてきたのに、今回は逆に手助けが遅いとまたも怒られる始末。 彼の一族は、互いに仲が良いというわけではなく、特に故郷を離れてこんな遠い島国に住もうなどという一族の吸血鬼はどうにも彼並みの変わり者で、それが故に長への尊敬の念が薄い。 その後、トラブルも収まったのだから興味をなくしてさっさと故郷に帰ればいいものを、この吸血鬼は日本にこっそり長逗留することを決めてしまった。 もちろん、日本の人間社会に紛れて暮らしている仲間には内緒で。 一族の吸血鬼たちが知れば、確実に憤慨もの。 何しろ、自分たちの長が人間の社会見学大好き、餌であるはずの人間面白いというどうにも吸血鬼らしからぬ理由で、一族の元を長く離れてしまうのだ。 たとえバレて戻ってきてほしいと懇願しようにも、一族の住まう城がある異界と人間界の最も近い接点は東欧である。 日本に来るためには、海を越えなければならない。
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