エピソード0 バサラブ氏、居座る

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海を越えることができるのは、吸血鬼の中でも力のあるもの、上位の者に限られる。 そういうわけで、吸血鬼一族の長バサラブは、誰にも邪魔されることなく、日本での生活をしばし満喫してから悠々と帰路につこうと考えたわけだ。 「さて、まずはどこに泊まるか決めねばなるまい。せっかく異郷の地にやってきたのだ。この国の質素かつ謙虚な作りの家など購入してみるのもよかろう。」 いくら城住まいとはいえ、失礼である。 万事がこんな考え方であり物の言い方なのだ。 本人は、別にふざけているわけではない。 心底そう思っているから始末が悪い。 そこで、冒頭の場面に戻る。 日本の人間社会の生活を思いきりエンジョイしようと張り切っているバサラブは、拠点作りのために住居を購入するために不動産屋に来ていた。 「中古の一戸建てというのも捨てがたいなあ。どれもリーズナブルな金額で良心的ときている。わし自身が有しておる個人資産であれば、それなりの住宅が一括で購入できよう。」 数百万から数千万の物件をリーズナブルで良心的、一括購入発言。
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