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そう、長生きをしていると、こういうことになる。
自分の城に芸術品だの骨董品だの宝石類だのを溜め込み、しかも異界なので強盗にも遭わなければ税金を納めることもない。
ずるい貯蓄の結果、バサラブは人間の尺度から見ると、とんでもない資産家になっていた。
本当にずるい。
「だがなあ、貧しく古い不自由で欠陥だらけの居住空間を借りる機会が、今後あるかどうかもわからんしなあ。」
そんな中古マンションばかりじゃない、そう反論してくれる日本人はこの場にはいなかった。
自分の考えを口にすると納得できたのか、バサラブは破願一笑。
「おお、それはないな!うむ、なかろう!それに、集合住宅は我が城と共通と言っても過言ではない。親近感が湧くではないか。さまざまなことを我慢する羽目になろうが、そこはわしは謙虚だからなあ。」
謙虚の定義を変えかねない発言だが、吸血鬼が一軒家を購入することだけは、どうやらなんとか避けられた。
つまりは、「〇〇町一丁目の幽霊屋敷に吸血鬼が住んでいる」なんぞというまことしやかで胡散臭いことこの上ない都市伝説を作らずに済んだのだ。
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