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翌日の夕食は、特上寿司の出前だった。
バサラブは、ネタをめくって下の酢飯との間に塗られている黄緑色の物体をしげしげと眺めた。
「先日も疑問に思っていたのが、これは何かな、睦月くん。何故食物の中に絵の具がついているのだろう。」
「絵の具じゃありません。わさびです、聞いたことありませんか。」
「おお、ワサビ!確かジャパニーズ・エキサイティング・スパイスではなかっただろうか。」
まったく意味がわからない英訳にどう返事をしたものか困惑しつつ、睦月は大トロを口に運んだ。
極上の脂が口の中に溶け出して、思わず睦月は「んんんー!」と声を上げて悶えた。
一人で暮らすようになってから、寿司の出前などとったこともなく、回転寿司に行っても常に一番安い100円の皿のみ。
回転寿司で十分満足と思っていたが、厳選された高級なネタの前に睦月は幸福感にどっぷり浸かった。
そんな睦月の様子を見て、バサラブは寿司を一つつまんだ。
食べるのだろうかと、睦月は思わず目を丸くして次の動作を見守った。
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