エピソード0 バサラブ氏、居座る

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もしも一族の吸血鬼が用意するのであれば、この気まぐれで楽しいことが好きな長の機嫌を損ねるような真似を避けようと、逆に無駄に高いプライドから豪邸を用意したことだろう。 おもねるようなその行為こそ、バサラブにはつまらないものなのだが、一族にはそれが伝わらない。 だから、こんな体験をする機会はもうないかもしれないと中古マンションを自分で購入してみたはいいが、普段の城住まいの生活を考えると、どうにも満足できないというところだろうか。 しかし、フェクテとネグルは、バサラブが使役している使い魔の中でも古参中の古参。 自分の主を喜ばせることを、己の首が跳ぶ以上に最優先させている。 なので、バサラブの気分を今一度上げることに言葉を尽くす。 ネグルに続いてフェクテも発言を求めた。 「長におかれましてはこの国の滞在期間は不明で、しかもいずれは故郷にお帰りになる身。例えば戸建てを購入いたしましても、資産価値としてこの国に持ち続けていく意味はないと考えます。それにマンションですと、こちらの部屋と同じフロアの住人とも交流が持てるのではないかと。」 住人の迷惑など、考慮の外。
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