エピソード0 バサラブ氏、居座る

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「僭越ではございますが。」 主はこの国の人間の多様な生活様式と異国文化、そして、人間観察をしたいのではございませんかーー その言葉に、バサラブは最優先すべきことは何かをもう一度思い出した。 「うむ、異文化交流に人間観察。素晴らしいとは思わんか。我が城に引っ込んでカビが生えるに任せているような連中といるより、短命で知的にも原始生物に近く感情的で何をするかわからん人間をこの肌で体感していくという楽しみの方がどれほど有益で有意義なことか!」 その一族を自分の城に集めて住まわせているのはおまえだとは、使い魔たちは言わない。 「では、ここをこの島国での住み処と決めて、必要なものを揃えていこうじゃないか。まずは、ワインセラーだなあ。なんと!人間の一般家庭でもワインを最適な環境で保存できるよう、小型化されたものが売っているそうな。それと、さほど睡眠の重要性は感じんが、ベッドがあるとよい。うむ、まずはそれらを揃えよう。」 棺に入って眠ることで体力を回復できるとか、日光を防げるとか、そんな概念はこの吸血鬼に存在しない。 きっと日光を浴びながら昼寝ができる。
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