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そして翌日から、バサラブは宣言通りに振る舞った。
ドアから出て施錠もし、エレベーターで部屋と外を行き来する。
外に出れば、住人たちの出勤や登校、ゴミ出しの様子を観察する。
「人間どもは何をそんなに急ぐのだろうなあ。いくら電車やバスの時刻が決まっているからと言って。あと5分10分早く行動すれば、のんびりできるだろうに。しかも、脆弱な肉体なのだ、過度な肉体の酷使は禁物だと思うのだが。」
その5分10分がどれほど貴重か、一度就職してみろと思うが、嬉々として就職活動をし始めそうなのも事実。
普段はバサラブの影に溶け込んでいるフェクテが、律儀に答える。
「あれもまた運動なのでは?」
「あのように短い足を忙しく動かして、朝から運動とな。やはり人間というものは、よくわからんなあ。それにしても、どうだ、あのゴミの量。人間というものは、どれほどの期間であれほどのゴミを捻出するものなのだろう。」
ゴミなんぞ燃やして灰にしてしまえば楽でよいのにというバサラブは、当然不要なものを燃やすことも塵にすることもできるし、そもそもゴミを出すという感覚もない。
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