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部屋を購入して住み始めてから10日めの夜。
遂にバサラブは飽きた。
平日と土日の様子が違うというのも観察した。
土日を終えてまた平日に戻ってというのも見た。
そこまで彼なりに根気強く観察していたのだ。
その結果、このマンションという集合住宅に住んでいる人間の生活パターンをざっくりと理解したバサラブは、見ているだけのこの状況がとんでもなく嫌になってしまった。
「やはり、種族間交流というものは、相互理解の点からも必要ではないか。隠れていても何も生まれん。」
種族間交流を人間側もしたいと思っているかどうかとか、交流によって理解ではなく敵対関係が成立するかもしれないとか、隠れていなかったらとっくに不審者として通報されていたんじゃないかとか。
そこら辺をまるっと横において、バサラブは姿を隠して秘密裏に人間観察することをやめると宣言してしまった。
「これからは、堂々といこうじゃないかね。まずは、最初に会った人間に的を絞ろう。」
吸血鬼が。
堂々と。
一歩下がって聞いていた使い魔の二人は、主人の吸血鬼にあるまじき決意に対し互いにちらりと視線を送り合ったが、反論はしなかった。
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