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「友人になるのだから、彼女の行動範囲も知っておいた方がよかろうなあ。それと、5階から乗ったということは、彼女の部屋は5階にあるに違いない。」
友人と言っておきながら、発想はどんどんストーカーチックになっていく。
「ネグル。おまえ、ちょっと5階に行って、彼女の部屋がどこか探ってきなさい。」
呼ばれたネグルが、バサラブの影の中で聞こえない声で返事をする。
一筋の黒い煙が、影からするりと立ち上って消えた。
「さあ、出掛けよう。彼女はいったいどこへ出掛けたのかな。あのような軽装だ、遠くへは行っておらんはず。」
鼻唄でも歌いそうな上機嫌で、バサラブはマンションの入り口を出た。
上原睦月は、マンションから700メートルほど離れたコンビニにいた。
つい10数分前、部屋でしていた仕事の手を止め、時計を確認した。
凝り固まった肩や首をごきごき言わせながら立ち上がり、冷蔵庫を覗く。
「あちゃー・・・買い忘れてたかー。」
ミネラルウォーターも炭酸飲料もアルコールの類いもない。
牛乳はあるが、これは明朝までとっておくものだし、あとグラス1杯分しかない。
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