エピソード1 バサラブ氏、友人を作る(一方的に)

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「このような時間に、一人で外出かね。」 突然、頭上から声が降ってきた。 睦月は脳内で絶叫する。 『あ、ああ、あいきゃんと、すぴーく、いんぐりーっしゅ!』 日本語だということに気づかない。 豊かなバリトンのその声は、妙なる美声であったのだけれど、それよりも見ず知らずの外国人に話しかけられたという事実に、睦月の心臓はばくばくと煩く鳴った。 『早くーー早くーー早く1階についてーー!』 やがて、エレベーターが1階に到着すると、睦月は転がり出るように外に飛び出した。 しばらく走ってから後ろを見て、ついてきていないとわかるとほっとして止まる。 怖かったという気持ちが収まってくると、今度は自分の態度に落ち込む。 もしかしたら、上の階の住人の客だったかもしれない。 外国人だから、日本人と違ってフレンドリーに挨拶してきた程度かもしれない。 なのに、ろくに返事もしないで、逃げるように出てきてしまった。 「ああー・・・私、日本人の印象、悪くしちゃったー・・・」
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