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突然、睦月は腕を引かれた。
あまりにも急なことで、力の入った手からコンビニの袋が飛んで、車道側に投げ出される。。
シャッターを下ろしている店舗のそこの狭い路地から、黒い帽子を深く被った男が、睦月の腕を掴んでいた。
「ひ・・・っ」
叫ぼうにも、怖くて声が出せない。
この地域に住んでいて、今まで一度もこんな目にあったことはない。
このまま路地に連れ込まれたらだめだと抵抗するも、睦月の力はほとんど役に立たない。
男のもう1本の腕が伸びてきて、睦月の胸を服の上から鷲掴みにした。
その衝撃に、睦月は完全にパニックに陥った。
痛いほどぎゅうっと握ってくるその力に、恐怖しか感じなかった。
「レディーに対する行動が、かくも野蛮であってよいはずがない。愛すべき人間とはいえ、下品で価値を見いだせない個体が混じるのは避けられん。悲しいかな、我が一族とて例外ではない。」
不意に。
睦月の腕と胸から、男の腕が消えた。
睦月は、その場にへなへなと崩れ落ちる。
その側に、見たこともないほどピカピカに磨きあげられた高級そうな革靴があった。
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