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靴大きいな・・・とぼんやり思いながら、睦月は顔を上げた。
そこにいたのは、たった今睦月を路地に引きずり込もうとした男の胸ぐらを片手で掴み、やすやすと高く持ち上げていた先程の大きな外国人だった。
じたばたと暴れる男を、外国人は自分の顔の近くまで引き寄せた。
「去ね。疾く去ね。これよりこの場から1キロメートル圏内に足を踏み入れることは許さん。踏み入れた瞬間、貴様の足の指が消し飛ぶよう術をかけてやろう。」
物騒なことを言いながら、大柄な外国人は男の足に触れた。
そして、手をぱっと放す。
宙に浮いていた男は、アスファルトの上に尻餅をつき、それから慌てて立ち上がって走り去った。
そのすべてを、睦月は呆然としながら見ていた。
「大丈夫かね。女性が一人でこのような時間に歩くことを危惧していたのだが、間に合ってよかった。」
外国人の大きな手が睦月の手をとる。
思わず睦月は短く叫んで、その手を振り払った。
睦月の手をとったその大きな手は、とても冷えていた。
体温がまったく感じられないほど。
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