エピソード1 バサラブ氏、友人を作る(一方的に)

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「おお、すまんすまん。忘れておった。わしの手は冷たかったのだった。」 バサラブは、コートの内ポケットから革の手袋を出して両手にはめた。 「これでいいかね、お嬢さん。」 再び差し出された手に、睦月はおずおずと自分の手を乗せた。 そのまま優しく立ち上がるのを助けられる。 「す、すみません、私、助けてもらったのに・・・」 自分の危機を救ってくれた相手だというのに、手が冷たいというただそれだけで、手を思いきり振り払ってしまった。 しかも、エレベーターの中で自分に話しかけてきた外国人で、そのとき自分は無視したというのに。 申し訳ないのと、怖い思いをしたのとで、睦月の目がぶわっと潤む。 「け、け・・・さつ・・・警察に連絡しなきゃ・・・」 半泣きの状態で、それでもスマホをバッグから出した睦月を、バサラブが止めた。 「あの男ならば、わしの部下を憑かせたから心配はいらんよ。他のレディーにもあのような無礼極まりない真似をしたら、即断罪するよう命じてある。」 「ぶ、部下?」
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