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破れかけた袋の中、おにぎりは潰れ、凹んだ缶からは酎ハイが噴き出していた。
かろうじてペットボトルはタイヤに直撃されなかったのか無事だが、千切りキャベツも無惨な有り様だった。
しゃがんで袋の中を確認し嘆く睦月に、バサラブが優しく声をかけた。
「災難ではあったが、これもまた縁というもの。この近くに、深夜まで開いているバルはないかね?」
「バル?」
「食事ができる場所であれば、どのような呼び名でもかまわんが。」
そう言われて考えた睦月は、バサラブとともに歩いていける距離のファミレスに移動した。
物珍しげに周囲を眺めたバサラブは、メニューを開くなり先程の注文をしてしまった。
それと、自分にはグラスの赤ワインを一杯。
「君は腹を空かせているのだろう?ここはわしにおごられたまえよ。何、知り合った記念にだ。」
「は、はあ・・・」
目を白黒させた睦月は、どう反論したものだろうかと悩んだ。
そのうち、料理が運ばれてくる。
「さあ、食べたまえ。食べて、先程のことなど忘れてしまえばよい。」
「そう!さっきのあれ!酷いですよね!」
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