エピソード0 バサラブ氏、居座る

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吸血鬼。 人類に敵対する魑魅魍魎、妖怪と呼ばれる類いの中で、これほど人類の脅威となり、遙か昔から死闘を繰り広げてきた悪は他にはないと言っても過言ではない。 吸血鬼が、人類の脅威である理由。 その最たるものが、彼らにとって人類が食糧であるということだろう。 まれに伴侶としたり、しもべとして使役するためにグールにしたりすることもあるが、そのほとんどは血を吸われて果てるか、道端の石ころのごとく、意味のない塵芥のごとく、潰され引き裂かれ捨てられる。 吸血鬼。 それは、悪。 それは、闇。 それは、邪。 それは・・・ 「ふむふむ、築43年の中古マンションとな。価格が360万円と。驚異的な安価なのだが、欠陥住宅というわけではあるまい。そして、たかだか43年で中古とは。確かに歴史的建造物になるには年月が不足しておるが、43年なんぞ我が居城に比べればまだ新築の域のはず。はて?」 それは、一族に内緒で日本に拠点を構えようとしている、なんとも非常識な存在だった。 こちら、アレクサンドル・バサラブ氏は、何を隠そう欧州随一と言われる吸血鬼社会の中でも屈指を誇る一族の族長なのだが。
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