エピソード0 バサラブ氏、居座る

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自分の城を陰気くさいと平気で言うのもどうかと思う。 建てたのはバサラブだし、維持し続けているのもバサラブだ。 膨大な魔力を無駄に有効活用し、異界に城を建てて一族をそこに住まわせ、日本に来ている今もその状態を維持している。 でたらめな実力、吸血鬼の中でもとんでもなく非常識。 「あのような場所に戻るくらいなら、この島国のコンパクトな人間に合わせた住居の方がよほど面白味がある。」 そして、長く生きていると弊害もあるというもの。 いずれ出てくる人生の飽き、諦念。 そこで老いて消えてくれればいいものを、バサラブはかなり早い段階で興味の焦点を人間に合わせた。 合わせちゃったんです、ああ。 迷惑な話である。 誰に?もちろん、人間にもこの吸血鬼の一族の者たちにも。 こんな危険な人ならざるものが自分たちの中に混じっていると知ったら、どれほどパニックが引き起こされることか。 まあ、理解する以前にそんな化け物がいるわけがないと真っ向から否定されるのが先だろうが。
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