エピソード0 バサラブ氏、居座る

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理由は単純明快。 楽しみがあるから。 ただそれだけだ。 一族の吸血鬼が、この日本に辿り着いた。 それが、たまたま彼のお気に入りの変わり者であり、日本での生活がいかに楽しいか手紙に書いて彼に送った。 それを何年も読んでいた彼が、日本に興味を抱かないわけがない。 彼の故郷であり異界でもあるところに、彼の膨大な魔力で維持され続けている城の一室に閉じこもることは、彼にとってあまり嬉しいことではなかった。 何故ならば、この1000歳にもなる吸血鬼、楽しいことが大好きときている。 ついでに言うなら、人間を単なる餌と見なしていない。 彼の言葉を借りて言うならば。 「人間というものは、頭も悪く体もひ弱でやることなすこと的外れでありながら、何故か繁栄の道を辿った妙な生き物だなあ。これが単に食欲をそそる血液のみを保有する袋であったなら、わしの興味関心の度合いも違ってくるのだが。」 単なる餌ではなく、妙な餌という意味か、これは。
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