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2.竜人
突如目の前に現れたのは山と山。そして見渡せば大きく広がるのは湖.......だろうか。私は確かに空にいたのだが。
そう思い空を見上げてみるも、そこに広がるのは青と白だけ。そう、私は大地に立っているのだ。目線からでも自身のその小さすぎる体躯が分かってしまいまた混乱する。
何が起きたのかは理解が追いつかない。確か、私は神によって.......。
「おい、アンタどうしたんだ?
こんな所で素っ裸で突っ立って。昨日の嵐に服でも持ってかれたのか?」
唐突に聞こえた人間の声。ふと振り返ると、私よりも小柄な人間がそこに居た。少年はこちらをただ不思議そうに眺めているように見える。辺りには木々が散乱し、何かがあったことを報せている。
目の前の少年は私に話しかけているのであろう。言葉は理解出来る。理解は出来るが、どう返すべきかがよく分からない。
「いや。あ、あぁ……。」
迷った末の答えだ。
私の肉体に比べ一回り以上も小さい青年に私はまともな返しすらも出来ない。見れば私は裸のようで、目の前の青年からすればこの状態は異常らしい。
少年は小さく笑う。そして幸いなことに、同性な為か彼は答えきれない私に対して衣服を渡してきた。
「服を持ってかれたとしたら間抜けすぎるよな。ほら、あんまりいい生地ではないけど無いよりはまじだろ?それ着なよ。」
バサッ と広げ着てみる。それは藍色の膝上まである大きなシャツだった。
「感謝する。」
「感謝するってアンタ不思議な話し方するな。」
青年は笑う。それは悪意があるものでは無いことだけは分かった。
「俺の名前はシュラスってんだけど、アンタの名前は?ここら辺じゃ見ない顔だよな?」
見下ろしてた場所にいるはず。それは分かっているのだが、正確な自分の位置も分からない。自分の顔も分からない。
彼はきっと初対面という意味合いで言っているのだろうが、彼の表情からは人種的に雰囲気が違うというニュアンスも含まれてるように感じられた。
「私か……私は……ヴァイスだ。」
ヴァイス。これは青のやつが私を呼ぶ時に使っていた呼び名だ。赤と緑からはシロと呼ばれていたが、響きでヴァイスの方が気に入っていた。
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