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「やぁシュラス君お疲れさん。ん?一緒にいるのは何方かな?」
シュラスに着いていき、街のとある店内からそう声をかけられシュラスが立ち止まる。シュラスより一回りほど歳を食ってるであろう彼は茶色い短めの髪と褐色の肌、そして何より筋肉の塊のような体が印象的だった。
「こいつはヴァイスっていうらしいんだ。
サブ湖の近くにいたから取り敢えず連れてきたんだ。」
「ほぅ……。ヴァイス……君かな、ここいらじゃ見ない顔だが、 どこから来たんだ?」
男は私を不思議そうに見る。
そして、私が周りを見渡すとようやく彼等の反応の意味が分かった。
この街の人間のほとんどが褐色の肌と黒寄りの髪色をしていた。しかし、私は真っ白い肌と伸ばされた長い髪を掴んで見てみると少し青みがかった銀色をしていた。元の姿の体毛に酷似したそれは私の心を少し落ち着ける。
だがこの石を整形され組まれた家々が立ち並ぶ古風な街並みには余りにも不釣り合いな見た目なのだろうとも理解する。
「私は……首都から来たはずなのだが、少し記憶が曖昧なんだ。」
咄嗟の嘘だった。
しかし、首都ならば私のような見た目の人間がいる可能性があるのではないかと考えそう言う。
「ほう、首都からわざわざ。よく見れば傷もあるじゃないか。記憶が曖昧と言うことは昨日の嵐のせいで頭でもぶつけてしまわれたのか。」
「そうだな、でも実はさっきアイツらに襲われてヴァイスも怪我を負ってるんだ。だから治療しようかと思ってたんだけど.......。
というかヴァイス記憶喪失ならもっと早く言ってくれれば良かったのに。悪いけどちょっとここで待ってて。」
シュラスはそう私に話すと、店内へと入っていった。私はやはり不思議なのだろう、周囲の人間は皆私を見ているようだ。
そして、ここでもう一つ違和感に気付く。
「左目……。」
私は百年ほど前に左目を失っていたはずだ。しかし、この体には左目があった。
神の配慮なのか、それとも体自体が私本体とは関係ないものだからなのかは分からないが、私は言い様のない幸福感を感じた。
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