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母さんは、この日になると毎年、小さなノートみたいなものを仏壇に置く。
おおじいちゃんと、ばぁちゃんと、
それから僕の双子の弟の仏壇だ。
「ねぇ、前から思ってたけど、それ何なの?」
「あぁ、これ?これは母子手帳っていうの」
僕の問い掛けに、
母さんは、見る?とその小さなノートを差し出した。
開いてみると、
小4の僕にはイマイチ読めないし、理解出来ないような文章がずらずらと並んでいて、
僕は、ふーんとそれをパラパラ捲った。
ふと、母さんの字が書いてあるページに目が留まる。
「これは、一歩の弟がお腹の中にいたときの記録だよ」
僕には、
母さんのお腹の中で死んでしまった双子の弟がいたらしい。
そのことは、前から聞かされていた。
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