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梨子は十八万ほどのカード決済をして、そのままカズの見送りで、外に出た。
「リコ、また連絡するからさ。今日はごめんね、あんまり付けなくて……」
カズがしょんぼりしながら梨子に告げた。梨子は不機嫌な顔を見せて、
「ううん、私みたいなOLはやっぱり無理かなって思った」
「そんなこと、気にしないでよ! 俺が金目当てみたいじゃん……」
しゅんとするカズ。梨子はそれを見て、慌てて、
「べ、別にそんなこと言ってないよ! ただ、私の傍にいてもらうためには、もうお金遣うのキツイなって思って……また、外で会いたいんだけど、無理?」
言うと、カズがそっと梨子を抱きしめた。梨子は驚いて、外は雑居ビルの明かりに照らされて、二人はそのままじっとしばらくしていた。カズの温もりがスーツ越しにも梨子にしっかり伝わっていた。酔ったままの梨子だったが、そのカズの匂いが鼻孔を擽ると、なんだか安心した。やっぱり、カズのことが……好き。
それからカズが耳元で、
「また会いにいくよ。絶対」
「う、うん。わかった。連絡、待ってる……」
言うと、梨子はそっとカズから離れて、手を振って地下鉄まで歩いて行った。
カズはずっと手を振っていた。
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